特定非営利活動法人 ブックスタート

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国際シンポジウム

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ブックスタートは、1992年に英国ではじまりました。英国と日本では社会的・文化的背景が異なるものの、その活動の歴史や経験を詳しく学び、日本での活動に関心のある方々と、地域に広がるブックスタートのイメージを共有しようと、2000年11月4日に東京・上野の東京国立博物館 平成館大講堂で「ブックスタート国際シンポジウム」を開催しました。

主催:「子ども読書年」推進会議
(同ブックスタート室が独立し、現・特定非営利活動法人 ブックスタート)

共催:ブリティッシュ・カウンシル

後援:国際子ども図書館、日本小児科医会、NHK

当日は約390名の参加者が集いました。英国からは、ブックスタートの推進母体である教育基金団体ブックトラストからアレックス・ストリック副代表、活動の効果 を追跡調査したバーミンガム大学のバリー・ウェイド教授、ワルセール図書館司書ジェニー・マンダーさん、絵本作家でありイラストレータでもあるデビ・グリオリさんをお招きし、日本からは、コーディネーターとして「子ども読書年」推進会議の松居直副代表(注1)、東京大学大学院の秋田喜代美助教授(注2)、「子ども読書年」推進会議ブックスタート担当の佐藤いづみが参加しました。

※パネリスト・コーディネーター肩書きはすべてシンポジウム開催当時
注1: 特定非営利活動法人 ブックスタート 会長
注2: 特定非営利活動法人 ブックスタート 理事

第1部 パネルディスカッション

第1部のパネルディスカッションでは、まず基調報告として、アレックス・ストリックさんから、英国でのブックスタートの歴史について報告がありました。また英国ブックスタートの成功の理由がいくつか挙げられ、そのひとつとしてブックスタートが読書環境を充実させる取り組みという枠に留まらず、子どもの育つ環境を豊かにする活動であると捉えられた結果 、乳幼児保健の専門家などが関わる、社会的に広い支援を受け入れる活動として発展してきたことなどが強調されました。

さらに、地方自治体の中で具体的実践をしている立場から、英国中西部にあるワルセール図書館の司書であるジェニー・マンダーさんにお話をいただきました。実際に自分が地域で接している子どもたちが、「みんな本を手にして生まれている」ということや、自治体行政がその資金を提供していることの意味について、そして図書館司書、保健師がどのように協力しあっているのかといった具体的な取り組みなどについても詳しく説明されました。

次に、絵本作家で4児の母でもあるデビ・グリオリさんが、ブックスタートを英国出版社がどのように受け止め、どのような効果を生んでいるのか、そして「我が子と本を読む喜びを分かち合う」ということがどんなに素敵な楽しみであるかについて、多くのエピソードを元に語られました。

英国のブックスタートの効果を追跡調査したバーミンガム大学のバリー・ウェイド教授は、プロジェクターでその統計的な調査結果を発表されました。ブックスタート・パックを受けとった家庭では、本に対する関心が高まっていることや、子どもに集中力がついたこと、また就学時の学力が言語面 ・計数面双方において高かったことなどが説明されました。

そうした英国からの発表を受け、松居副代表から、言葉が消えていく社会を救うためには、まず赤ちゃんの時からの声の文化を取り戻すこと、耳から言葉を聞き、それを自分のものとして物語の世界に入り、そこから字を読む力をつけていくことが大切なのではないか、という指摘がされました。

次に「子ども読書年」推進会議の佐藤 いづみから日本での試験的な実施のために準備されたブックスタート・パックが紹介され、杉並区における実施が、図書館/保健衛生部そして子育て支援をしている部署の連携の下に行われる予定であることなどが報告されました

最後に、秋田助教授により「豊かな言葉を赤ちゃんと交わすことにより、絆をつくっていくこと」が日本のブックスタートの基本にあることが確認されました。近年特に母親の育児の孤立化や育児ストレスの問題が社会的にも大きくなっており、そうした状況に対し、絵本が「すべての健診参加者」に提供され、それが専門家のサポートも加わる形で支えられることで、保護者が心にゆとりを持てる時間を作り出し、同時に子どもの生涯にわたるコミュニケーションの力を育むという点において、ブックスタートが特徴づけられました。

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第2部 分科会

第2部は、2つの分科会に分かれて行われました。

『乳幼児と絵本』というテーマの分科会では、赤ちゃんにとって絵本とはどのような意味をもつのか、赤ちゃん向けの絵本の製作において重要である要素は何かといったことについて、ビデオ上映などと共に活発な議論がなされました。

『地域コミュニティーとブックスタート』の分科会では、ブックスタートが始まったことで、地域や全国の図書館がどのように変わってきているのか、そしてその意識をどう効果的に活動に結び付けているのか、また各地域の活動の支援をするサポーター役としてブックトラストがどのような働きをしてきたかといったことについてより具体的な報告がされました。

約半日間にわたるこのシンポジウムは、日本のブックスタートのまさにスタートにあたる瞬間に、8年間の経験を持つ英国から、非常に多くの有意義な事例を学ぶことができた機会でした。そしてその経験を日本全国の関心を寄せていただいている方々と共有し、ブックスタートの可能性を充分に確認することができました。このシンポジウムをきっかけとして作られた人の輪を大きく広げ、今後のブックスタートの取り組みに結び付けていきたいと考えています。

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パネリスト経歴

アレックス・ストリック
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サウスアムストン大学卒業。1991年に、救急医療の普及団体であるセント・ジョン・アンビュランスの国内青年部の開発マネージャーとなり、ジュニア部門(6〜10才児対象)で勤務。1996年には、ブックトラスト児童文学部門のマネージャーとなり、学校や図書館、書店、親向けの出版物の制作に携わり、児童図書週間やブックスタートを含む、児童を対象とした事業を担当。1998年にブックトラストの副代表となり、児童文学及びブックスタートの責任者となる。

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ジェニー・マンダー
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ウェールズ大学卒業後、サンドウェル公立図書館で司書として勤務。1985年からワルセール図書館情報サービスにて、学校図書館サービスなどの部署に勤務。1993年からワルセール市のブックスタートのパイロット・プロジェクトに参加し、家族読書活動、ゆりかごクラブなどを展開。1999年には同市のブックスタートのコーディネーターとなり、家族教育プログラムの開発にも携わる。

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デビ・グリオリ
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エジンバラ美術大学を卒業後、広告業界に勤務。次男誕生後、1989年にウォルカーブックスより最初の本を出版。その後も精力的な活動を続けており、執筆及びイラストの仕事を手がけている。彼女が生み出した最も有名なキャラクターのひとつである「くまとうさん」シリーズは、絵本やボードブックなどで出版され、過去に多くの賞を受賞している。

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バリー・ウェイド
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バーミンガム大学の教育学及び英語の講師を経て、1996年より同大学の英語教育学部の教授に就任。また、英語教育の国家機関や児童図書基金を始めとする数多くの団体の活動に協力し、複数の教育団体の顧問として、積極的な活動を展開している。また、学術書から詩集、ノンフィクション、フィクションにいたるまで、幅広い分野の著書も数多く出版している。

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松居直(まついただし)
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同志社大学法学部卒業。福音館書店創業に参画、編集部長、社長、会長を歴任、現在福音館書店相談役。1956年「こどものとも」を創刊し、編集長として赤羽末吉、長新太、堀内誠一、安野光雅、加古里子、中川李枝子など、多くの絵本作家を世に出す。1965年絵本『ももたろう』でサンケイ児童出版文化賞、1993年モービル児童文化賞を受賞。著書に『絵本とは何か』『絵本をみる眼』『絵本の森へ』『絵本・ことばのよろこび』など。特定非営利活動法人 ブックスタート会長。

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秋田喜代美(あきたきよみ)
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東京大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。学校心理士。東大教育学部助手、立教大学文学部助教授を経て、東京大学大学院教育学研究科(学校教育開発学コース)教授。専門は発達心理学・学校心理学。主な著書に「読書の発達過程」(風間書房)、「読書の発達心理学」(国土社)、「知を育てる保育」(ひかりのくに)、「子どもをはぐくむ授業づくり」(岩波書店)など。子どもが育つフィールドでの発達研究を行っている。特定非営利活動法人 ブックスタート理事。

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佐藤いづみ(さとういづみ)
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1999年に英国の読書推進運動を視察した際に、子育て支援としても注目を集めていた「ブックスタート」の広がりを知る。日本でも長期的な地域の取り組みとして推進するために、2000年より「子ども読書年」推進会議企画委員として日本での運動の立ち上げに関わる。

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