
応援メッセージ > 児玉 ひろ美 【JPIC読書アドバイザー / 司書】
「これは司書の仕事でしょうか?」「私は保健師でも保育士でもないので不安です」ブックスタートが始まった当初、子どもと本に関わる多くの方々から寄せられた声です。月齢期の赤ちゃんに絵本の読みきかせは良いことだろうと思っていても、それは各家庭の選択であり、親子のコミュニケーションというデリケートでプライベートな営みと考えられていました。公共機関である図書館は、子育て支援の側面から、育児関連本や赤ちゃん絵本の充実、ベビーカーのバリアフリー化や授乳・おむつ替えの施設など、環境整備には積極的に取り組んでいましたが、親子の内面に関わることには踏み込むべきではないという考え方も少なくなかったのです。
子ども読書年の制定とブックスタートは同心円の波紋のようにその輪を広げ、子どもの読書活動推進法施行後は、日本中の図書館員や子どもと本に関わる者がわらべうたと手遊びの講習会に参加しました。私の読みきかせ講習会の依頼にも、乳幼児向けの選書やプログラム、手遊び等の要望が急速に増え、冒頭に挙げたような声が耳に届いたのもこの時期です。
ところが、継続はまさに力なり。ブックスタートはその参加親子だけではなく、実施している側にも大きな変化を与えました。赤ちゃんの反応やそれを見つめる保護者の方の眼差しは、絵本や人の声で語る言葉の力を再認識させ、質問やアンケートは、利用者の、資料や職員に対する潜在的なニーズを気づかせました。そして、担当者が懸命にそれぞれの状況や環境に応じた方法で最適なサービスへの試行錯誤を重ねる間も、ブックスタートで出会えた子どもたちは日々成長し、自らの足と意志で歩みはじめています。
共有した穏やかな時間や子どもたちの記憶のなかに潜ませたささやかな幸せの種を感じること。このことが子どもと本に関わる者の大きな力となっているのです。
ブックスタートは今日も何処かで関わる人皆に笑顔をもたらしています。