
応援メッセージ > 前田 昇 【とっとりの子ども読書ネットワーク会議 事務局長】
2000年に紹介された日本のブックスタート運動は、飛躍的な広がりを見せ、先見性のある自治体や首長にとって、今や必須の施策になったのではないか。
ブックスタートの素晴らしさはいろいろあるが、自治体の職員である私から見て画期的な点の一つは、この施策を通じて保健衛生部門と教育・図書館関係者、そして市民ボランティアの連帯感が培われつつあることだ。保健師や図書館司書などの専門職がリードする職場は、人事交流が少ないこともあって、案外連携が難しい。仮に家庭教育の講座などを一緒に行うことがあっても、テーマや運営はそれぞれの流儀で、結果参加者が集まらない、あるいは固定化しているところも多い。ブックスタートは、基本的に全家庭に分かりやすく届ける取り組みであり、市民ボランティアが読みきかせなどその得意技を活かして、行政の中核的な施策に参画できる場でもある。
しかし、危惧する点もないではない。市町村の財政事情が厳しいなかで、合併が進み、個人へ本をプレゼントするというブックスタートの見直しにつながるのではないかということだ。今日のブックスタートの浸透度を考えれば、これを中止するという新市の判断はないと信じるが、ブックスタートの理念が薄められてしまう危険性はあるかもしれない。例えば、これまでブックスタートに熱心な市町村は、小さな町が多かった。健診の対象家庭数も少なく、顔の見える関係のなかで、言葉を添え丁寧に手渡すことの効果が大きかったのではと思う。合併によって市町村が大きくなれば、乳児健診のエリアの見直しがなされ、1回あたりの対象家庭が増える、また担当者の異動等によってボランティアとの連携が希薄化する、さらには乳児健診自体を病院等へ委託するなど、考えすぎだろうか。あらためてブックスタートの理念を分かりやすく情報提供していくことが必要だろう。
ブックスタートの可能性は益々大きいと感じているが、それを発揮させていくには、10年、20年と継続されることが必要だ。そのためには、市民のなかにブックスタートファンを作っていくことが必要だと思う。心通う親子の関係づくりを何とかしたいと思っている人は多いと思う。その人たちにブックスタートの意義と実践をPRし、応援団となっていただこう。またブックスタートのなかで育った子どもたちにも伝えたい。例えば手渡す絵本と共に、ボランティアからのメッセージを書き添えて、その子が成長した頃、親子でそのことを話せたら素晴らしいと思う。市町村の財政難や合併後の不安もあるが、逆に言えば、その直前に、日本のブックスタートが始まったことを喜び、一層の普及に取り組みたい。